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はい、一応最終回です。
次回からは、ひとまず、サークル関係ではなくなります。
でも、たまにこの場を借りて、冊子のために校正を皆さんにお願いすることがあるかもしれません。
自分の作品はなかなか客観的に見れないものなので。
これからもよろしくお願いします。

 

 
 お好み焼き業界は今、戦国時代に突入した。それは、もはや「お好み焼き主食・おかず論争」の比ではなく、「何を以ってお好み焼きとするか」という域にまで達した。それは、関西のお好み焼きがかつての力を失い、地方の独特の「粉モン」の焼き物が市民権を得てきた事を意味していた。

 

 かつての「もんじゃ焼き」は「東京好み焼き」とおしゃれに名前を変え、東京の土産の一つとなり、若者の人気を得た。また広島では「元祖お好み焼き」と銘打ち、ソースから具材から全て現地調達し、「地元密着の、これが本来のお好み焼き」としている。
 これはあくまで、有名どころの話だが、北は北海道南は沖縄まで、ちょっとしたお好み焼きブームが巻き起こり、それと同時にお好み焼き業界は「お好み戦国時代」に突入した。
 各地で、粉の品種や具材の種類、その原産地までにこだわり、オリジナリティを出している中、関西の粉モン基地・大阪が、黙っているはずがなかった。
「伝統的な大阪のお好み焼きのテイストを残しつつ、大阪らしい新しいものは出来へんやろか?」
 彼らは一生懸命知恵を出し合った。
「粉モンを全てお好み焼きにブレンドしたらどうやろ」
「大阪本来の薄味をアピールしたらええんとちゃうかな」
「大阪名物をかたどった飾りつけはどうやろ」
 会議は三日三晩続けられた。
 そして、数日後。試行錯誤に試行錯誤を重ね、ようやく、大阪らしいお好み焼きが完成した。
 早速、大阪市長、大阪府知事等を呼び、試食会を開いた。
 しかし、来てみて人々はびっくりした。
「なんや、今までのお好み焼きとなぁんも変わってへんやんか」
「ご飯に味噌汁、それにお好み焼き。味が変わってんのかと思ったらそれさえ変わっとらへん。どういうつもりや」
 皆口々に彼らに対し罵声を浴びせた。
 しかし、彼らは平然と答えた。
「はい。確かに皆さんのおっしゃる通り、なぁんも変わっとりません。しかしこれが関西のお好み焼きです。そして、これがウチらのオリジナリティです。他の所は、何を思ったか独自の方法とか言って自分達の伝統や、本来のものをなくしてまでお好み焼きにこだわったはる。せやけど、それはおかしいと思うんです。お好み焼きの文化がないんやったらないでええと思うんです。わざわざ、自分達のお好み焼きを考え〝なければならない〟、みたいなんって、ちっとも〝お好み〟やあらへんでしょ? せやから、今度紹介する時、そのことをちゃんと言ってほしいんです。そうすればきっと分かってもらえると思うんです」
 彼らのその言葉に、一同は涙した。
 後日、彼らの「そのまんまの大切さ」に感銘を受けた大阪府知事は、全国に向けて堂々と胸を張って宣言した。
 
   今、お好み焼きは戦国時代です。北は北海道の「熊もびっくり鮭たっぷりのオホ
  ーツク焼き」から「アップルのみ焼き」云々南においては宮崎の、「まさにそのまん
  ま南国お好み」、沖縄の「ハイサイゴーヤーお好み」と、それぞれ特殊なお好み焼き
  を作られ、展開されているわけですが、果たして、本来の独自性という観点から見
  て、これらのお好み焼きは「独自のもの」と言えるのでしょうか。全国のお好み焼
  きの食べられ方を見たところ、どうも、どこの都道府県でも、お好み焼きをパンの
  ように主食として食べておられる。どこの県を見ても「おやつ」として食べたり、
  それこそ「朝食のパン代わりです」というこだわりが見られるところがなかった。
   しかし今回、うちの府のお好み焼き職人はとても大切な事に気付かしてくれた。
   それは、自分達の府はお好み焼きを「おかず」として食べる文化がある。これほ
  ど独特なものはほかにないだろう。そういうことを言ってくれました。確かに、各
  地のそれぞれの努力は、頭が下がります。しかし、自分達の独自性を消してまで、
  お好み焼きにこだわることもないと思うのです。ある意味きっかけとなった私ども
  が、こういうのもおこがましいかもしれませんが、もう、こんな無意味な争いはや
  めにしませんか? お好み焼きの文化がなくてもいいじゃないですか。どこが元祖
  でもいいじゃないですか。大事なのは、おいしくて、みんなに愛されるそういう、
  ささやかなものでもいい、そういう人の心のぬくもりが通っているようなものを作
  ることではないでしょうか?
   少々、長くなりましたが、以上で「お好み焼き」のアピールを終わります。
 
 会場は、拍手と感動の嵐となった。今までの自分のやってきた事は何であったのか、何がしたかったのか、自分はその〝大事なこと〟に何故気付かなかったのか。皆、後悔と反省の念に駆られた。
 こうして、会議は無事終わった。
 
 後日談になるが、この会議を境に「お好み戦国時代」が、何事もなかったかのように終焉を迎えたことは言うまでもない。
 
                       《続けてほしいか? この話》
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やっぱり
基本は強火だよねw
李亀醒 URL 2007/03/24(Sat)13:52: 編集
ですね
(そして)お好みはおかずです。
黒尾のおやじ 2007/03/24(Sat)15:32: 編集
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プロフィール
HN:
徒然なる館長
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/05/09
職業:
大喜利見習い
趣味:
たましい大放出をやめないこと
自己紹介:
京都府民。よく「京都人」と言われるが、あれは「京都市(の一定区域内)に何世代も住んでいる京都市民」という意味であって、私がどこに住んでいようが「京都人」と呼ばれる日は無い。残念。
最近は、もはやマンガ読みな人になって、小説やら新書やらが読めてない。ぐわー。だから、このブログが消される危機に曝されたり結構愉快なことになってた今日この頃。もうちっと、ここで頑張らせていただきたかったり、いなかったり。(え
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