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どうも。ここんとこまめに更新している。徒然なる館長です。
今回の作品は、去年七夕の時期に部の冊子に載せた作品です。
今、コンビニバイトをやってるのですが一年前の今頃も別のところで同じコンビにバイトをしていました。
この作品を書いた時には辞めてしまった後だったのですが、そこら辺のコアな雰囲気が作品全体に漂っていると思います。
ま、是非読んでやってくださいな。
『約束は必ず守れ』と言われる。
しかし同時に、その約束を〝絶対に〟守ることもできない。
それが現実。
と、思うのだが……
ここにいる人は、そうは思っていないようだ。
「アンタは何度言ったら分かるのよ!」
☆
只今、五時半少し過ぎ、コンビニの事務所にて。
私は今、お説教を受けている。
私のバイトの時間はとっくの昔に終了した。
深夜勤務の人たちは、すでに一仕事も二仕事も済ませている。客の数にして十数人。
その間、ずーっとオーナーとマネージャーによるお説教タイムである。
オーナーは泣き落としで何とかクリアしたが、問題はマネージャー。
オーナー(夫)とマネージャー(妻)は夫婦なのだが、アルバイターらに対する指導方針が微妙にずれている。下につくものとして一番困るタイプだ。
まったくこの夫婦どうやってここまで夫婦やってきたんだか……
そうじゃなくて。
マネージャーも女であるわけだから、この涙が本物か否かなんて簡単に分かる。泣き落とし作戦は、まったく持って無駄なのだ。
自分で「私は厳しいよ」と言うだけあって、マネージャーの言ってる事も言い方も他の人に比べて細かい。もうええっちゅうねん、って言いたくなるくらいに。
『誰にお金もらってるの? お客様からでしょ? だったら、お客様に最大のサービスを提供しないでどうするのよ!』
とか、
『もう少し丁寧にやってよ!』
と言いながら、
『さっさとして』
と言ってみたり……
そのさなかにオーナーが指示を出してみたり、今のように帰る間際になって〝今日のおさらい〟を始めてみたり……
泣く元気も言い返す気力もなかったのでとにかくいつも通り謝る。
その態度にマネージャーはまた腹を立てて、結果この時間なのだ。
散々叫んだ末に、「言いたい事があるなら言ってみなさい」とか言い出す。あのねぇ、マネージャー。あーた、反論したところであなたは聞く耳持ってくれるんですか? 聞かないでしょ?
もういいですマジで……
まったく、神や仏じゃあるまいし約束を全て守れるわけないじゃないですか。
あ~、もうシフトは終えたんだし早く帰らせてよ、マネージャーっ!
そもそも今日は七夕。
彼とお祭りに行く約束をしてるのに、この調子じゃあ待ち合わせの時間に間に合いそうにないよ……
七夕と言えば、織姫と彦星はなんてマメと言うか真面目な奴らなんだろう、と思う。
私の記憶するところによると、二人はかつて毎日毎日会ってたが、織姫のほうが仕事をおろそかにして彦星に会うようになったから、織姫のパパは「七月七日にしか会っちゃダメ」という事にしたとかしないとか。そういう話だったと思う。って、遠距離どころじゃない距離の恋愛じゃないか。どうやってあんたらは会うんだよ、と言いたくなる。出会うって言っても何万光年とか言う川幅を挟むんだから、二人の強くて厚い絆は計り知れない。それに比べて私ときたら、自転車で十分も掛かるかどうかの場所で待っててくれてる彼に会うのに三十分以上遅刻しようとしている。ああ、なんて私は悪いヤツなんでしょう。悲しすぎて涙も出ないや……
さて。
やっと説教は済んだ。
けどもう六時。
お祭りはとうの昔に始まっていて、今日の目当てだったお神輿もきっと、クライマックスだろう。
コンビニの裏に向う足取りが重い。ため息一つ吐く。涙までこぼれそうになる。完璧にダメージを受けている。
(あー、なんて言い訳しよう……『オーナーに長々と説教されて遅くなっちゃったの。ウソじゃないよ、ホントなんだから。でも、遅れてゴメンね てへっ』とか言っても許してくんないだろうなぁ……って、何、言い訳をバシバシ考えちゃってんだろう。急ぐ事が先決だろ、何よりも!)
あ~、バカバカバカっ! と、頭をポコポコ叩きつつも、彼に対する申し訳ない気持ちと、大事なものを自分の手で壊してしまったような感覚が抜けなかった。
しかしそんな事ばかりも言っていられなかった。無駄だとは思いつつも、彼に『遅くなってゴメンっ』とメールして、すぐに自転車を走らせた。
さて。
バイト先から真っ赤な鳥居が見える。そこが私たちの待ち合わせ場所なワケだが……
これまで二人でどこかに遊びに行くにしろ、買い物に行くにしろ、私たちはその鳥居で待ち合わせた。もちろんお互い遅刻などしなかった。
もう、ほとんど人もいなくなった。もしかしたら終わってしまったんだろうか?
(怒って帰っちゃったかな……)
ポケットに入れてあるケータイは、未だに反応なしだ。メールが帰ってこないことほど怖いものはない、とつくづく感じた。
しばらくして、自己最速記録をたたき出して境内にたどり着きはしたものの、そこには彼は当然のことながらいない。まぁ、これだけ遅刻されたら誰だって腹を立てて帰るだろう。
(ゴメンっ。わざと遅れたわけじゃないし、もちろん嫌いなわけでもないの。信じてっ! 神様お願いっ! こんな私を許して!)
涙で顔がくしゃくしゃになっているだろうな、とは感じつつも、周りの事をお構いなしに私は泣き出してしまった。
ただただ、ルーズな自分を恨むだけだった。
と、そこに聴き覚えのある声が入ってきた。
「待たせてゴメン!」
息を切らせて彼がこっちに駆けてくる。
この時ほど神様に感謝した瞬間はないと思う。神様は私を見捨ててはいなかった。
「いやぁ~、余裕を持たせて出てきたつもりだったんだけど、途中でタイヤがパンクしちゃってさ。ホントゴメっ……!」
「……バカ……」
私はあまりの嬉しさに彼の胸の中に思い余って飛び込んでしまった。
神輿は見れなかったが、とてもいい一日だった。
☆
『約束は必ず守れ』と言われる。
誰だって破る事を前提に約束なんてしない。
しかし、同時にその約束を〝絶対に〟守ることもできない。
それが現実。
でも、〝信じる〟ということも必要だ。
たとえそれがほとんど不可能であっても、僅かな可能性にかけてみること。
それも大事じゃないかと私は思う。
This story is end!
Thank you for read this story very much!
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プロフィール
HN:
徒然なる館長
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/05/09
職業:
大喜利見習い
趣味:
たましい大放出をやめないこと
自己紹介:
京都府民。よく「京都人」と言われるが、あれは「京都市(の一定区域内)に何世代も住んでいる京都市民」という意味であって、私がどこに住んでいようが「京都人」と呼ばれる日は無い。残念。
最近は、もはやマンガ読みな人になって、小説やら新書やらが読めてない。ぐわー。だから、このブログが消される危機に曝されたり結構愉快なことになってた今日この頃。もうちっと、ここで頑張らせていただきたかったり、いなかったり。(え
最近は、もはやマンガ読みな人になって、小説やら新書やらが読めてない。ぐわー。だから、このブログが消される危機に曝されたり結構愉快なことになってた今日この頃。もうちっと、ここで頑張らせていただきたかったり、いなかったり。(え
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