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SF作品、というのがどういったものを指すかわかっていない。そんな馬鹿者が、「これはSF作品だ」と感じる、そんな面白い作品だ。

舞台は今からおよそ50年後の東京。東京の大部分が国の政策により森に帰し、その一方で、アトラスという、炭素材という軽くて丈夫な新素材でできた建物が、成長を続けている。集中豪雨が多発し、もはや地上に住み続けられないとの理由で始まったアトラス建設の裏で、経済力に物を言わせたものだけが地上の地獄からの解放が許され、持たざる者は、地上のドゥオモから、政府討伐の機会を狙う。

アトラスとドゥオモは、陰と陽、天と地のような関係にあり、その中のキーパーソンもまた、その対象関係にある。共にトリプルAという特別な存在であり、それだけ特殊な能力を共に持ち合わせている。その二人の一挙手一投足がそれぞれの周りにいる人間を巻き込んでいく。

この話の中で「炭素」が一つ、鍵となる。そもそも話の舞台となる時代の50年前、大体今ぐらいの時期に、二酸化炭素排出量に従って課される炭素税のやり取りが経済の流れの一つに組み込まれ、同時に、この時期東京は巨大地震によって壊滅的被害を受けた、という設定となっている(今だと妙なリアリティを感じてしまうが)。そこからの復興の一つに、カーボンナノチューブという炭素による新素材が、一役を担う。軽くて丈夫な素材のため、速やかに、かつ高層になっても耐えうる次世代の素材によって飛躍的に復興、経済も炭素税の取引により、国際社会においても、先進的な国となった。しかし、そんなバブルもいつかは崩壊する。カーボンマネーの流れが激しくなる中で、炭素経済時代の立役者と、その申し子との「知恵比べ」が始まる。

舞台となる時代の50年前の状況があながち現在の状況からかけ離れていない、ということが、まず、この世界に入るとっかかりとなっていると思う。また、どこか超現実的な部分もありつつも、炭素税のくだりや、実は物語の中で、時代の申し子ともいうべき登場人物の、少女が発する言葉があるが、「東京には、歴史も風土もない」という、皮肉とも言える言葉があり、現代の、無粋な街づくり、遺産や遺跡、郷土というものに対する愛情の薄さ、粗さ(これらは傍から見ていられる立場だから言えることなのだろうが)、が真実的であり、話の深さになっていると思う。結果面白いと感じられる。

話の入り方、読者へイメージさせる段取りの上手さ、面白い作品とはどのようなものを指すかということを学んだ気がする。なかなか普通続き物を、次のも読んでみようと思うことはないが、これは下巻も読んでみたい。
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HN:
徒然なる館長
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/05/09
職業:
大喜利見習い
趣味:
たましい大放出をやめないこと
自己紹介:
京都府民。よく「京都人」と言われるが、あれは「京都市(の一定区域内)に何世代も住んでいる京都市民」という意味であって、私がどこに住んでいようが「京都人」と呼ばれる日は無い。残念。
最近は、もはやマンガ読みな人になって、小説やら新書やらが読めてない。ぐわー。だから、このブログが消される危機に曝されたり結構愉快なことになってた今日この頃。もうちっと、ここで頑張らせていただきたかったり、いなかったり。(え
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